「アレックス、絶対戻ってくるような真似はすんじゃねえぞ。」
アレックスという名の男性は警察にそう言われると刑務所を後にした。彼は刑務所で服役を終え、社会復帰を目指していた。

しかし犯罪者としての素顔が知られてるためか周囲の視線は冷たくハローワークに通っては仕事を探していたが前科持ちという理由で面接はおろか名前だけで会社からは門前払いされ続けた。

「くそっ、一回でも服役すると世間の扱いは悪くなるのか。」
アレックスは苦悩した。

それでも仕事を探したり外を出歩いたりしていたが、彼が街中に現れると冷ややかな視線とひそひそ話で溢れかえり、外には居場所がなかった。
(どいつもこいつも偏見しか持てねえのかよ!)
アレックスの苦悩は次第に怒りに代わっていった。

一方サニーは自宅でくつろいでいると外が騒々しいことに気づき、外に出てみると街はパニックに陥っていた。

「突然男が暴れだしたんだ。」
通行人の一人がそう言うとサニーは男の元へと向かった。するとその姿を見るや否や見覚えがあった。

「前にニュースで見たアレックス?」
「そうだ!てめえもとどめさしに来たのか?」
アレックスはサニーに怒りを向けた。

「違う、私はそんなことしない。過去は変えられないけど未来は変えられるよ。だから私はアレックスが社会で生きていけるよう協力するから。」
サニーはアレックスを説得するが、彼は聞く耳を持たなかった。

「ふざけるな!俺の本心を理解してくれる奴なんかどこにもいねえよ!!」
アレックスは自らの苦悩を明かした。

数年前、とある職場でアレックスはひょんなことから同僚と口論になっていた。争いは次第にエスカレートし、同僚はアレックスにこう言った。

「脳なしのお前なんか役に立つかこの蛆虫が!出来損ないのお前なんか今すぐ消えろ!!」
この一言にアレックスは怒りを爆発させ、同僚を押さえつけながら殴る蹴るの暴行を加えながらこう言った。

「てめえのほうこそ消えろ!てめえなんか生きていても無意味だしてめえの存在そのものが世間には迷惑なんだよ!!」

その後駆け付けた警察にアレックスは逮捕された。一方同僚は軽傷で済んだもののアレックスに言われた言葉に深い傷を負ってしまい自ら命を絶った。
一方逮捕されたアレックスは暴行と傷害で数年間服役し、その間に同僚の自殺を知ったという。しかし悲劇はこれだけで終わらなかった。

事件後アレックスの自宅にはマスコミが押し掛け、精神的に追い込まれた家族は一家心中を図っていた。結果、家族は全員死亡し、そのことも刑務所で知らされたという。一連のことを聞いたアレックスは自分を責め続けた。

逮捕から釈放までの一連の出来事を聞いたサニーはアレックスを優しく抱きしめた。

「そんなに辛いことがあったのね。やったことはいけないことだけども人生は何度でもやり直せるよ。」
アレックスは次第に落ち着きを取り戻した。

しかし住民の一人が「アレックスは俺らを騙すためにうそを言っている」と言い出したことで状況は一変、再び周囲から非難に晒されてしまう。再度怒りに火が付いたアレックスは無差別に襲い掛かろうとした。

アレックスが住民に襲い掛かろうとした時サニーはそれを阻む。

「これ以上罪を重ねないで!出所するときに戻ってくるようなことはしないって約束したんじゃないの?」
サニーは問いかけるがアレックスは聞く耳を持たない。するとそこに警察が駆け付け、アレックスを逮捕しようとした。

しかし警察は手錠を引っ込めた。

「確かにアレックスはやってはいけないことをやった。けどな前科持ちだからって理由で差別や偏見で見るのは社会復帰を阻み再犯につながるんだぞ!」
警察は周囲の人々に呼び掛けた。しかし住民らは「犯罪者の味方するのか!?」と猛抗議した。

「いい加減にして!!」
サニーの怒号で静まり返った。

「再犯が発生してもいいの?治安悪くなってもいいの?再犯で悪い事されて嫌な思いしたくないでしょ?確かに過去は変えられないし過去の悪事をなかったことにすることはできない。でもだからと言って一方的に差別や偏見の目で見るのは再犯の悪循環に陥って治安悪化につながってしまうのよ。私の言ってること違う?」

サニーの呼びかけで周囲の見る目は変わったようだ。

その後アレックスは仕事を探し、社会復帰を目指していたようだ。

人生は一度でも前科がついてしまうと世間からの風当たりにさらされ、社会復帰の障壁となるばかりか時には再犯にもつながってしまうこともある。出所した者が社会復帰を果たすには我々が理解を示し偏見を持たないことが重要だ。

しかし言い換えれば一度でも犯罪に手を染めることは自分の人生を奪うことにつながり、時には家族などの関係者にも影響が及ぶこともある。自らの人生を守るにはいかなる場合でも犯罪に手を染めることはあってはならないのである。

終わり

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